米ドル流動性が暗号資産市場に波紋 ─ ヘイズ氏の読み解くビットコイン下落の真因
暗号資産市場はここ数週間、不安定な値動きを続けており、特にビットコイン(BTC)は10月初旬の史上最高値から約25%の下落を記録している。だがこの動きを政治情勢や規制ニュースと結びつけるのは正確ではないと、暗号資産アナリストとして著名なアーサー・ヘイズ氏は指摘する。
彼が強調する真の要因は、「米ドル流動性の急速な枯渇」だ。
■ 米ドル流動性の急低下がなぜ起きたのか
ヘイズ氏によれば、現在の米国金融市場は複数の要因が同時多発的に発生したことで、異常なほど現金需要が高まる局面にあるという。
主な要因は以下の通りである。
- 連邦政府閉鎖により5週間Tビル発行が停止(10月1日〜11月4日)
- FRBの量的引き締め(QT)で銀行準備預金が3,000億ドル減少
- 11月中旬の大規模な国債入札決済と、法人税納付・オプション満期が重なった
- 仮想通貨市場で19億ドル規模のレバレッジ清算が発生し、ドル需要がさらに上昇
これらが重なった結果、レポ金利は急騰し、銀行は現金を放したがらない状況に陥った。市場では「12月のQT終了とTビル供給増で改善する」との見方もあるが、現時点では逼迫がピークに達しているとみられている。
■ 流動性指数は下がってもBTCは上がっていた──“支え”となった要因
興味深い点として、ヘイズ氏は次の事実を指摘する。
4月から米ドル流動性指数は10%低下したにもかかわらず、ビットコインは12%上昇していた。
この矛盾を説明する鍵が ビットコイン現物ETF と デジタル資産トレジャリー(DAT)企業の買い増しだ。
しかしそこには落とし穴があった。
● ETFの流入は本物の長期資金ではなかった
ヘイズ氏は、ETFへの資金流入の多くがヘッジファンドによるベーシス取引(ETF現物を買い、CME先物を空売りする)だったと指摘。
スプレッドが縮小すると、彼らは一斉にポジションを解消し、ETFから大量の資金流出が発生した。
● DAT企業も買いを縮小
株式が純資産価値(NAV)を割り込み、プレミアムが消えると、DAT企業もBTC購入を弱めた。
こうした背景から、ETF・DATという“買いの支え”が薄れた結果、米ドル流動性低下の影響が市場に一気に現れ、現在の下落につながっているという。
■ 今後の市場は「トランプ政権の流動性政策次第」
ヘイズ氏は、これからの暗号資産市場を左右するのはトランプ政権がどれだけ流動性を供給できるかだとする。
- インフレ対策を掲げつつも、「最終的には紙幣を刷らざるを得ない」との見方を示す
- 長期的には流動性供給が再開し、市場は再び上昇に向かう
- だがその前に、4月以降の上昇分を短期的に調整する局面が必要
そのためヘイズ氏自身は、すでにステーブルコイン比率を増やしてディフェンシブな姿勢を取っているという。
■ 予測:BTCは「8万ドル台まで下落」→その後は「最大25万ドルへ急騰」も
ヘイズ氏が描くシナリオは二段階に分かれている。
▼ 短期:さらなる下落圧力
- 米株が10〜20%調整
- 10年債利回りが5%接近
→ FRB・財務省が紙幣印刷に動く緊急性が高まる
この局面でBTCは 8万〜8.5万ドルまで落ちる可能性を指摘。
▼ 年末:流動性復活で急騰
もしも流動性供給が再開されれば、
→ BTCは 20万〜25万ドルへ向け急上昇する可能性があるという。
■ まとめ:流動性が市場を動かす──“冬の底”の後に“春の急騰”が来るのか
いまビットコインが直面している下落は、単なる市場心理や外部ニュースによるものではなく、米ドル流動性というマクロ要因に根ざしたものだとヘイズ氏は解釈する。
ETFとDATによる支えが弱まったことで、流動性逼迫の影響がよりダイレクトに価格へ反映されている。
だが一方で、米国の金融政策が再び市場に資金を流し込むタイミングが来れば、ビットコインは歴史的な上昇局面へ向かう可能性もある。
短期的な「調整の冬」をどう乗り切るか――
そして流動性供給の「春」がいつ来るのか。
市場参加者にとって、今後数週間は重要な分岐点となりそうだ。
