衆議院選挙での圧勝を受け、高市早苗政権は安定多数を背景に本格的な政策フェーズへと移行した。
市場ではこの政治イベントを起点に、「高市トレード」と呼ばれる新たな資本フローの動きが顕在化している。
財政拡張を前提とした政策運営、通貨安を一定程度許容するスタンス、そして産業政策としてのWeb3・暗号資産支援。
これらは日本株市場には追い風となる一方で、グローバルな資本配分においては短期的な歪みを生みつつある。
本稿では、高市トレードがもたらす短期のマクロ逆風と、
その裏側で進行する中長期の制度的追い風を整理する。
■ 高市トレードとは何か──国内好循環とグローバル再配分
高市早苗氏の圧勝は、日本が再び大規模な財政刺激とリフレ志向を明確に打ち出したことを意味する。
この政策転換は、日経平均を史上最高値圏へ押し上げただけでなく、国際的な資本配分にも影響を与えている。
オンチェーン・マクロ分析で知られる GugaOnChain は、
「これは米国資産から日本への単純な資本逃避ではなく、グローバル・ポートフォリオの再構築だ」と指摘する。
長年、超低金利によって敬遠されてきた日本国債(JGB)は、
財政拡張と国内インフレ期待の高まりを背景に、相対的な投資妙味を回復しつつある。
結果として、
・日本株・日本債券への資金吸収
・米国株ETFなどリスク資産への新規流入鈍化
という形で、資本フローの重心が微妙にシフトし始めている。
■ 短期:マクロ主導で進む米株調整とリスクオフ
この資本再配分と同時期に、米国株指数は調整局面へと入った。
直近7日間で
・ナスダック:−5.59%
・S&P500:−2.65%
・ラッセル2000:−2.6%
と下落しており、市場がマクロ環境を再評価していることが読み取れる。
為替面でも、
・円安の進行
・日米金利差の継続
・リスクオフ局面でのドル需要増加
が重なり、短期的にはドル高圧力がかかりやすい構造にある。
ドル高はグローバル金融環境を引き締め、
ドル建て債務を抱える企業の負担を増加させることで、
株式市場のバリュエーションに追加的な下押し圧力を与える。
■ BTC下落の正体──オンチェーンではなくクロスアセット
このマクロ環境下で、ビットコインも短期的に下押し圧力を受けやすい。
しかし重要なのは、その理由がオンチェーン需給の悪化ではない点だ。
リスクオフ局面において、ビットコインは
米国株指数との正の相関を強める傾向がある。
株式主導のポジション調整が、暗号資産市場にも波及する構造である。
GugaOnChain が提供する Crypto Quant の
「クロスアセット指標(BTC & US Index Tracker)」を見ると、
S&P500、ナスダック、ラッセル2000が同時に調整する局面で、
BTCも下方向へ引きずられる確率が高まることが確認できる。
直近のBTC下落は、
・長期保有者の投げ売り
・オンチェーン供給の悪化
ではなく、
株式ベンチマークを起点としたリスク削減とポジション圧縮が主因と考えるのが妥当だ。
■ 中長期:衆院安定多数がもたらす制度的追い風
一方、中長期の視点では評価は大きく異なる。
2026年2月8日の衆院選で、自民党は衆院の3分の2以上を確保した。
これは、税制・金融・産業政策において法改正を進めやすい政治環境が整ったことを意味する。
高市首相自身も、
令和8年度予算と政府提出法案を通じた「大きな政策転換」を明言しており、
Web3・暗号資産は単なる投機対象ではなく、産業育成の文脈で語られ始めている。
■ 税制とステーブルコイン──2026年は「土台作り」の年
特に注目されるのが暗号資産税制だ。
20%申告分離課税と損失繰越については、方向性としてはほぼ固まったと見られる。
ただし、実際の適用は早くても2028年以降が有力であり、
2026年は以下のような制度インフラ整備の年になる可能性が高い。
・金融商品化の整理
・インサイダー取引規制
・不公正取引ルールの明確化
同時に、ステーブルコインについても、
DEXやプロトコルそのものを直接規制するのではなく、
・交換業者
・仲介業
・フロントエンド
・広告・勧誘
といった出入口レイヤーに規律をかける方向性が鮮明だ。
これはFATF基準や米国のクラリティー法案とも整合的であり、
オンチェーン分析やトラベルルール運用の高度化が進むと見られる。
■ 結論:短期は耐え、中長期を取りに行く局面
エックスウィンリサーチとしての整理は明確だ。
短期的には、
・高市トレードを起点とした資本フロー変化
・ドル高圧力
により、米国株とビットコインは調整を受けやすい。
しかし中長期では、
・日本主導の制度整備
・税制改革への道筋
・ステーブルコインとオンチェーン金融の実装
が、暗号資産市場の構造安定化と実需拡大につながる可能性は高い。
今見るべきは価格水準そのものではない。
グローバル資本フロー、クロスアセット相関、そして制度進捗──
金融市場は、静かに次のフェーズへ移行しつつある。
