日本の金融制度は、いま静かに、しかし決定的な変化点に近づいている。
暗号資産規制が金融商品取引法(金商法)へと組み込まれ、トークン化(トークナイゼーション)が本格化する2026年──その中心に立つのがSBIグループだ。
「2026年は日本にとって転換点になる」
NADA NEWS創刊特集の締めくくりで、SBIグループ代表・北尾吉孝氏はそう断言した。
それは単なる制度改正の話ではない。
TradFi(伝統金融)とDeFi(分散型金融)が融合し、銀行の定義そのものが書き換えられる未来への宣言である。
■ 金商法は序章──世界は「すべてがトークンになる」段階へ
暗号資産が金商法の枠組みに入ることを、市場は「規制強化」と捉えがちだ。
しかし北尾氏の見立ては、まったく異なる。
「これは歴史的な転換点。リアルワールドアセット(RWA)が、すべてトークナイズされていく」
株式、債券、不動産、IP(知的財産)──
価値を持つあらゆる資産が、ブロックチェーン上で表現され、取引される世界。
金商法対応は、そのための“入り口”にすぎない。
米国ではトランプ政権下で暗号資産関連法制(GENIUS法、CLARITY法)が整備され、
ステーブルコインは急速に「金融インフラ」としての市民権を獲得しつつある。
日本でもSBIはすでにUSDCの国内展開を開始し、円建てステーブルコインの構想も公表。
三メガバンク連合に対抗する布石と見る向きも多い。
■ 最大のテーマは「TradFi × DeFi」──CEXとDEXの融合
北尾氏が2026年の最大テーマとして挙げるのが、
中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の融合だ。
SBI VCトレードは、現在はCEXとして機能している。
しかし北尾氏は「この形のままでは次の時代に対応できない」と断言する。
- CEXはオンランプ/オフランプとして不可欠
- DEXは透明性と自律性を担う
- 両者は競合ではなく補完関係へ
この統合が進めば、
取引所は“売買の場”から“金融インフラ”へと進化する。
さらに5年スパンでは、
SBI VCトレードを「銀行化」する構想すら視野に入るという。
■ 「デジタルバンク」という次の形
北尾氏が描く最終像は、
**TradFiの信頼性 × DeFiの自律性を備えた“デジタルバンク”**だ。
- ステーブルコインを基盤にした決済
- 最新のレンディングプロトコル
- トークン化資産の担保運用
- DvP(証券と決済の同時履行)の完全オンチェーン化
これは、既存銀行の延長ではない。
銀行という業態そのものの再定義である。
■ 日本だけを見ていない──シンガポール、中東、そして世界へ
もっとも、この構想は日本国内に閉じてはいない。
規制対応に時間を要する日本に対し、
SBIはすでにシンガポール、中東(ドバイ・アブダビ・リヤド)へと布石を打つ。
- シンガポールでは第2のSBI構想
- 中東ではデジタル金融とIP産業の結節点を狙う
- ベトナムでの取引所構想も進行中
競争相手は国内金融機関ではない。
Google、Amazon、X(旧Twitter)、そして世界のFinTechだ。
■ 円、IP、資本市場──トークン化がもたらす国家戦略
トークン化は金融だけの話ではない。
ゲーム、アニメ、知的財産(IP)をトークン化することで、
これまで一部の事業者しか触れなかった価値が、市場に解放される。
SBIが大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)を先行して立ち上げたのも、
資本市場そのものをデジタルに作り替える布石だ。
円建てステーブルコインも、
為替、貿易金融、キャリー取引といった文脈で重要性を増していく。
■ 結論:2026年、日本金融の「第2章」が始まる
2026年は、単なる制度変更の年ではない。
- 金融商品がトークンになる
- 銀行と取引所の境界が溶ける
- 日本の金融が、再び世界と真正面から競争する
北尾吉孝が描くビッグピクチャーは、
「金融をデジタルにする」のではなく、「金融を再発明する」試みだ。
その成否は、
日本がこの変化を“守り”で受け止めるのか、
それとも“攻め”で取りにいくのかにかかっている。
2026年──
日本の金融は、確かに作り替えられようとしている。
