暗号資産の税金の基本
暗号資産には、どのような税金がかかるのでしょうか?初心者がまず理解すべき、税の種類や申告が必要になる条件を確認しておきましょう。
また、収入が増えれば、税金以外に支払いが増える場合もあります。合わせて確認しましょう。
暗号資産を現金化すると税金がかかる理由
暗号資産は法定通貨ではないものの、財産的価値がある資産とみなされます。そのため、暗号資産を売却して日本円などに現金化した場合、売却益が所得とされ、所得税の課税対象となります。
なお、株式投資における「特定口座・源泉徴収あり」のような自動課税制度は暗号資産には存在しません。そのため、確定申告により自身で納税手続きを行う必要があります。
この制度は2017年から明確に整備され、現在では税務調査も強化されています。
暗号資産で確定申告が必要となるケース
確定申告が必要なケースは、立場によって異なります。
会社員の場合は、暗号資産を含む雑所得が年間20万円を超えると申告が必要です。これは年末調整ではできないため、別途対応が求められます。
専業主婦や学生で給与所得がなく扶養に入っている場合、暗号資産を含む年間の所得が48万円を超えると確定申告が必要です。
自営業者やフリーランスで事業所得がある場合は、暗号資産の売却益も確定申告が必要です。
国民健康保険料に影響が出ることも
自営業やフリーランスの場合、前年の所得金額で国民健康保険料が決められます。
そのため、暗号資産の利益が大きいと、次の年の国民健康保険料の支払いが大幅に増える可能性があります。
また、扶養に入っている専業主婦や学生も暗号資産の利益には注意が必要です。
これらの人は、一定の収入金額を超えると扶養から外れます。世帯主などの扶養控除がなくなり、世帯全体の税負担が増えたり、本人の健康保険料や国民年金保険料の支払いの義務が新たに生まれかねません。
これらの方は税金だけでなく保険料の負担も増えるため、暗号資産の現金化は特に注意が必要です。
暗号資産で税金がかかる6つのタイミング
暗号資産のやり取りで税金がかかるのは、現金化だけだと思っていませんか?
実は色々なケースで税金がかかることがあります。
ここでは、暗号資産のやり取りが原因で税金がかかる6つのタイミングについてご紹介します。
税金がかかるタイミングと、課税される金額の計算方法を確認しましょう。
1. 暗号資産を現金化したとき
暗号資産を売却して、日本円などの法定通貨に現金化したときに税金がかかります。
購入したときの金額とくらべて現金化したときの金額が多い場合、その差額が課税される金額になり、所得税の対象になります。
2. 暗号資産でモノやサービスを買うとき
暗号資産を使って商品やサービスを買った時にも、代金を支払ったタイミングで税金がかかります。
例えば、仮想通貨デビットカードを使って買い物をしたりATMから現金を引き出すことができます。この場合も現金化と同じ事とみなされます。
引き出したり買い物をした金額と暗号資産を手に入れた時の金額の差分が課税の金額になります。
3. 別の暗号資産と交換したとき
現金化をしなくても、税金がかかる場合があります。
例えば、ビットコインをイーサリアムなどの別の暗号資産に交換したときがそれに当たります。
それらの資産を交換したタイミングで課税の対象になります。
これは、前から持っている暗号資産Aを使って、新たに別の暗号資産Bを買ったとみなされるためです。日本円に換金していないのですが、課税の対象となります。
交換後の暗号資産Bが、元から持っている暗号資産Aより多い場合、その差額に税金がかかります。
4. 報酬として新しい暗号資産をもらう
労力やサービスのお礼や利息として、現金ではなく暗号資産をもらうこともあるでしょう。そのようにして手に入れた暗号資産にも税金がかかります。
これらは取得方法によって課税のタイミングや計算方法が変わることも。
代表的な4つの例(ステーキング、マイニング、ハードフォーク、レンディング)を紹介します。しっかり押さえておきましょう。
ステーキング:持っている暗号資産をブロックチェーンネットワークに預ける、つまりロックすると、そのお礼で報酬を受け取れるしくみ。これをステーキングといいます。
初心者も手軽に始められる方法です。
この報酬としてもらった暗号資産を受け取った段階の金額が課税の対象になります。
マイニング:暗号資産の取引をブロックチェーンに登録する方法があります。この成功報酬を仮想通貨でもらえます。この報酬をもらうための行為をマイニングといいます。
もらったタイミングの時価に税金がかかります。
マイニングのために、電気代・PCなどの設備投資が必要なこともあります。この時にかかった費用を必要な経費として申請ができます。
ハードフォーク:暗号資産の仕様が変わり、ブロックチェーンがこれまでのものと新しいものに分裂することをハードフォークといいます。仕様がフォークのように分裂することから、この名前がついています。
ビットコインを例に取ると分かりやすいでしょう。ビットコインはハードフォークを繰り返しています。その結果、ビットコインキャッシュなどの新しい通貨が誕生しました。
ハードフォークが起きると、元の暗号資産を持っていた人に新しい通貨をもらえることがあります。この新しい資産に税金がかかります。
この場合、新しい方の通貨は取得時点の価額は0円です。ハードフォークでもらった新しい暗号資産を売却、使用したタイミングでその金額に税金がかかります。
レンディング:自分が持っている仮想通貨を人に貸したとき、その利息を仮想通貨で受け取ります。それをレンディングといいます。
利息として受け取った暗号資産も課税の対象です。もらった時点の時価に税金がかかります。
5. 暗号資産をプレゼントとしてもらうとき
エアドロップやボーナスとして、暗号資産をプレゼントとしてもらったり無料で配布されることがあります。この方法で受け取った暗号資産にも税金がかかります。
受け取った通貨がすでに市場に出て価格がついているものは、受け取った時点の時価に税金がかかります。
一方、もらった暗号資産が新しく、まだ市場価格が決まっていない場合は、売却・使った時点の金額に税金がかかります。
6. 暗号資産を贈与・相続する
親族などから暗号資産を贈与や相続でもらうこともあるかもしれません。この場合、受け取った人に贈与税や相続税がかかります。
贈与や相続を受ける場合、原則として、暗号資産を受け取った時点の時価を使って税金を計算します。
これとは別に、上の1〜4のような現金化などの手続きをしたときにも所得税・住民税がかかります。その場合は元の持ち主が取得したときの価格を元に計算します。そのため、相続や贈与で計算したときの金額と変わることに注意してください。
暗号資産は高騰が激しいものもあり、売却時の差額が1億を超えるようなものもあります。もし、課税所得が6億を超える場合、所得税・住民税で55%、相続税と合わせて110%になります。つまり、相続した価額以上の金額を税金として納めるということです。
暗号資産の税金の計算方法
先ほど、暗号資産を現金化した時とそれ以外で税金がかかるタイミングと所得金額の計算方法を説明しました。
この所得金額をまとめて、どのように課税されるのか見ていきましょう。
暗号資産は雑所得として課税される
国税庁は、暗号資産の利益を「雑所得」として課税対象に分類しています。
雑所得は以下の式で計算します。
雑所得 =収入金額 − 必要経費
雑所得は主に、公的年金、副業に係る所得が該当します。これらの所得と合算して計算します。
雑所得は株式等の申告分離課税と異なり、給与所得や事業所得などと合算した総所得金額として計算します。この総所得金額から所得控除額を差し引いたものが、課税総所得金額です。
課税総所得金額は累進課税のため、その金額に応じて5%〜45%の所得税の税率が適用されます。
さらに、この金額を元に一律10%が住民税として課税されます。
課税総所得金額が4,000万円を超える場合、所得税と住民税を合算した税率は最大55%になるとも言われます。
株式等と損益通算されない点に注意!
所得税の計算する際に、各所得金額を算出後に損益通算と損失の繰越控除を行います。
損益通算は、損失が発生したときに利益と相殺することです。
損益通算をしても控除しきれない損失は翌年以降3年間に渡り繰り越すことができます。これを損失の繰越控除といいます。
では、暗号資産は損益通算と損失の繰越控除ができるのでしょうか?
暗号資産同士は雑所得の範囲内での損益通算が可能です。
しかし、暗号資産は損失の翌年以降への繰越控除は認められていません。
また、暗号資産の課税対象になる雑所得は、他の所得(不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得)と損益通算はできません。
そのため、株式や不動産売買の損失と暗号資産の利益は損益通算ができません。注意が必要です。
暗号資産の購入金額を計算する方法
暗号資産の税金計算のためには、暗号資産の取得価額の平均単価を計算する必要があります。その方法は、総平均法と移動平均法の2種類があります。
総平均法は、その年に取得した暗号資産の総取得価額を、総取得数量で割って年間平均取得価額の単価を算出する方法です。
移動平均法は、暗号資産を購入する度に取得価額の単価を算出する方法です。
購入金額の計算は国税庁が計算用のシートを公開しているので、そちらを活用すると良いでしょう。また、税金計算ツールを使えば自動で計算してくれます。
どちらの計算方法を選ぶかは、税務署に届け出をして決めることができます。届け出がない場合、個人の場合は総平均法が適用されます。
計算方法を届け出た後は、原則3年間は変更ができません。
暗号資産の経費として計上できるもの
暗号資産は雑所得であると説明しました。雑所得は収入金額から必要経費を引いて計算します。
暗号資産の経費として計上できるのは以下のものが挙げられます。
- 暗号資産の売却時にかかった手数料(購入時の手数料は購入価格に含む)
- 暗号資産関連の書籍代・セミナー受講費・情報商材費
- 取引に使用する通信費など(家事按分計算ができる)
- 取引に使用するパソコンやスマートフォンなど(10万円を超えるものは減価償却の対象資産になる)
- 暗号資産の税務処理を依頼した税理士報酬
- 暗号資産の損益計算ツール(Cryptact、Gtax等)の利用料
税金計算ツールで税金を自動計算する方法も
ここまで読んで、暗号資産の税金計算は複雑でできればやりたくないと思う人もいるかもしれません。
そのような方のために、暗号資産の確定申告をサポートしてくれる税金計算ツールがあります。年間の取引が多い人は検討してみると良いでしょう。
どのサービスも無料版が提供されています。一度試して自分に合うサービスを選んでみてください。
暗号資産の確定申告で準備する書類
納税が必要な場合は、確定申告を行います。
まず、確定申告の計算のために必要な書類を揃えましょう。
ここでは、準備する書類と、その書類が必要な理由を説明します。
これらは確定申告の際に提出する必要はありませんが、税務署から提出を求められることがあります。そのため、必ず保管するようにしましょう。
全取引所の年間取引報告書
まずは、全ての取引所での取引を合算して損益計算する必要があります。
これは国内の取引所だけでなく、海外取引所の取引も含めて申告が必要です。
取引所が倒産等で取引履歴が取得できない場合は、推定計算も可能です。
銀行口座の入出金明細
銀行口座の入出金明細は、現金化の証拠書類として必要です。
暗号資産の購入時レシートや取引履歴
これらは、取得価額の証明として必要です。前年以前に購入した暗号資産の取引履歴も残しておきましょう。
経費として計上する領収書
暗号資産の経費として計上できる、売却手数料、書籍代、セミナー代等の領収書は、経費の証明として必要です。
暗号資産の確定申告と納税の流れ
必要な書類が揃ったら、確定申告書を作成・提出して、納税を行います。
ここでは、確定申告書の作成・提出方法と、納税方法をステップバイステップで解説します。
確定申告はe-Taxでの電子申告を利用すれば、パソコンやスマートフォンで自宅から行えます。ぜひ活用してください。
暗号資産の現金化による所得の確定申告書を作成する
先ほど用意した書類を元に、確定申告書を作成します。
確定申告書B(第一表)の「雑所得」欄に、暗号資産を含む雑所得を記載しましょう。
確定申告書B(第二表)に暗号資産の収入金額と必要経費を分けて正確に記入します。
確定申告はいつ提出する?
作成した確定申告書は翌年の2月16日から3月15日まで(土日の場合は翌営業日)に提出しましょう。
確定申告書は3つの提出方法があります。
- e-Taxで申告する
- 郵便などで、住所地等の所轄税務署、または業務センターに送付する
- 住所地等の所轄税務署の受付に持参する
所得税を納税する
確定申告時期に所得税を申告した後、納付が必要な場合は納付の通知が届きます。
所得税の振替納税を利用する場合は、4月中旬頃に引き落とされます。
所得税の納税は、銀行窓口やATMでの振込、インターネットバンキング、e-Taxによる口座振替、クレジットカード払いやコンビニ支払いなどで行えます。
住民税は居住地の市区町村役場で納税額を決めます。翌年6月以降、一括または分割で納付します。
納税資金は法定通貨で事前に確保しておきましょう。暗号資産のままでは支払えません。
暗号資産の現金化は確定申告しないとバレる?
確定申告をせずに税金を未納しようとしても、ばれる可能性は非常に高いです。
取引所は顧客の取引履歴を税務署に報告する義務があるため、ほとんどの取引データを確認できます。
また、銀行口座への入金履歴から暗号資産の現金化がばれるケースが多発しています。
未申告が発覚した場合、所属税だけでなく、延滞税、無申告加算税、重加算税など複数の税が追加で課される可能性が高いです。
確定申告は忘れずにするようにしましょう。
暗号資産の節税の対策は?
「こんなに税金を払えない!節税する方法はないかな?」そのように考える方もいるでしょう。ここでは、現金化の代わりに暗号資産担保ローンを活用する方法や、売却タイミングの調整による節税テクニックなど、合法的な税負担の軽減策をご紹介します。
あなたの状況に最適な戦略を見つけましょう。
少額ずつ現金化して税負担を分散する
1つ目は1年以内に多額を現金化せず、複数年にわたって分割で現金化する方法です。税率の上昇を抑制して納税額を抑える方法があります。
会社員の場合、可能であれば、20万円以下に抑えて確定申告を不要にすることもできます。
暗号資産担保ローンで売却せずに現金化する
少しでも節税したいが、現金が必要という方は、暗号資産担保ローンを活用する方法もあります。
暗号資産担保ローンとは、保有する暗号資産を担保に法定通貨を借り入れる金融サービスです。暗号資産を売却しないため、税金が発生しない上に、含み益を維持できるメリットがあります。
暗号資産同士の損益通算を活用する
3つ目は損益通算のしくみを活用する方法です。含み損のある暗号資産を損切り確定して、年内に同時に売却しましょう。
暗号資産の現金化で税理士に依頼すべきケース
もし、暗号資産の納税に不安を感じることもあるでしょう。
その場合は、自分で手続きせずに、税理士に依頼することも検討しましょう。
税理士に依頼したほうがいいケースを5つ紹介します。参考にしてください。
- 暗号資産の年間の利益が500万円を超え、税負担が大きくなる場合
- 複数の取引所やDeFiサービスを利用して取引が複雑な場合
- 海外取引所での取引があり、外国為替の計算が必要な場合
- 法人化を検討しており、個人と法人の税負担を比較したい場合
- 税務調査の通知が来て、専門的な対応が必要になった場合
まとめ
暗号資産で得た利益を税金で損しないためには、現金化のタイミングが大切です。
どうしても現金化が必要なときは、損切りで損益通算する方法や、暗号資産担保ローンの活用も検討しましょう。
意外と忘れがちな点として、納税用の法定通貨を準備することが挙げられます。利益をすべて新たな投資などに使わず、残しておきましょう。
利益が出たら確定申告を忘れずに行いましょう。利益が大きいと思ったら、早めに税理士など専門家の手を借りることも必要です。