はじめに
中国政府がステーブルコインの発行を本格的に検討しているとの報道が注目を集めています。これは、ドル支配への対抗と人民元の国際化を目指す戦略の一環です。
背景には、香港で法定通貨担保型ステーブルコインを認める新たな規制整備が進んでいることがあり、中国本土との金融戦略に連動する形で動きが活発化しています。一方で、資本流出や投機的リスクに対する警戒も強く、国家主導での厳格な枠組みが模索されています。
概要
- 英FTの報道によれば、中国政府は人民元建てステーブルコインの発行を初めて検討。
- 香港では2024年にステーブルコイン規制が成立し、2025年からライセンス制を導入。
- 中国人民銀行の潘功勝総裁はステーブルコインの影響力を高く評価。
- ここ2か月で仮想通貨政策に関する専門家会議が開催され、「中国の国情に合うプロジェクト」の方針を確認。
- オフショア人民元(CNH)を利用したステーブルコインの承認も議論中。
特徴
- 人民元の国際化戦略:米ドルの金融覇権に対抗し、中国独自の通貨基盤をグローバル展開。
- 香港との連携:香港を実験場とすることで規制緩和と金融自由度を両立。
- 厳格な審査体制:資金洗浄や投機的リスクへの警戒から、国有銀行の選定とライセンスの限定導入を計画。
- オフショア市場の拡大:CNHを軸に、香港・英国・シンガポール市場で取引高が拡大傾向。
まとめ
中国政府が検討するステーブルコイン政策は、単なる仮想通貨発行にとどまらず、通貨覇権の再構築と人民元の国際化を狙う国家戦略の一環です。香港での規制整備とオフショア人民元市場の拡大を背景に、今後の展開が注目されます。ただし、自由な民間利用を許すわけではなく、資本統制の維持を前提とした慎重な設計が進む見込みです。