暗号資産と仮想通貨の違いは?
暗号資産と仮想通貨の違いは何でしょうか?
ここでは2つの言葉が登場した背景と歴史を交えながら紹介します。
暗号資産と仮想通貨は同じもの
この2つの言葉の意味に違いはありません。どちらもブロックチェーン技術を用いたものを指します。
法律のうえでは「暗号資産」が正式名称です。そのため金融庁や日銀などが発行する公的文書には暗号資産が使われます。
一方、「仮想通貨」の呼び方は通称になります。普段の生活では仮想通貨というワードを聞くことが多いですね。
この2つの呼び方が変わった背景には国際的な流れがあります。それぞれの由来と歴史を見ていきましょう。
仮想通貨の言葉のルーツと歴史
仮想通貨(Virtual Currency)という言葉が広がったのは、ビットコインが誕生した2009年ごろになります。
この頃は法的な枠組みがなく、ビットコインはネット上の通貨として利用されていました。
しかし、2014年にマウントゴックス事件が起こります。
ビットコインの取引所の1つだったマウントゴックス社のサーバーが何者かによってハッキングされました。その結果、顧客のビットコインと預り金が大量に流出し、最終的にマウントゴックス社は経営破綻してしまいます。このときの被害総額は、470億円と言われています。
これをきっかけに、日本では2017年に改正資金決済法が施行され、仮想通貨の法的な位置づけが定められました。
仮想通貨取引所や交換所は金融庁や財務局の登録を受けた事業者だけが行えるようになります。
暗号資産の言葉のルーツと歴史
2018年以降、国際組織である金融活動作業部会(FATF・ファトフ)で、仮想通貨のことを暗号資産(Crypto Asset)と呼ぶようになりました。
日本でもその流れを汲んで、2018年に金融庁が呼び方を仮想通貨から暗号資産に改めると発表しました。さらに、2020年の資金決済法等の改正で「暗号資産」の表示が正式に採用されます。
この頃から、既存の「仮想通貨」から「暗号資産」の呼び方へシフトしました。
暗号資産と仮想通貨を使い分ける方法は?
前述のように、2つは同じ意味であることを説明しました。
しかし、この2つはどのように使い分けるのがいいでしょうか?
もし、用語選びで迷ったときは、場面や相手によって使い分けるのがポイントです。
ここでは、具体的なシーン別の使い分けの方法をご紹介します。
法律・金融の現場では暗号資産を使う
金融庁や銀行、証券会社などでは「暗号資産」が正式な呼称です。金融機関で仮想通貨を金融商品として扱う場合、暗号資産と明記が必須とされていることがその理由です。
そのため、契約書や規約などの法的な文書は暗号資産で統一していることに注意しましょう。
また、国際的な会議などでも「暗号資産」の英語表記である「Crypto Asset」が使われています。
仮想通貨という表現は、法律上の混乱を避けるために、法律や金融の現場で使用することは控えられています。
ニュースやSNSでは仮想通貨を使う
一方、メディアやSNSではインターネット上で使える通貨、のインパクトから「仮想通貨」の使い方が今も主流になっています。
ニュースなどで、話題性やインパクトで注目してほしい場合の見出しには「仮想通貨」が選ばれやすいです。
一方で、メディアなどの媒体でも近年は「暗号資産」という表現も徐々に増加してきました。コラムやブログなどのコメント欄では今も2つの言葉が混在しているケースが多いです。どちらを使っても問題ないでしょう。
日常会話や投資初心者が迷わないためのポイント
先程述べたように、これらの2つの呼び方で戸惑わないためには、以下のように覚えておきましょう。
- 仮想通貨=通称
- 暗号資産=法律上の呼称
もし、話をする相手が金融や投資等の専門家などの場合は「暗号資産」の表現を選ぶことがおすすめです。
それ以外の初心者や一般的な会話では、どちらの言葉も通じます。
そもそも、暗号資産(仮想通貨)とは?
暗号資産(仮想通貨)とは、インターネット上でやりとりできるデジタルな財産的価値のことです。「資金決済に関する法律」では以下のように定義されています。
- 代金の支払い等に使用でき、法定通貨とお互いに交換できる
- 電子的に記録ができ、移転も可能
- 法定通貨や法定通貨建ての資産ではない
ここでは、暗号資産の特徴や種類など、基本的な内容についてご紹介します。
暗号資産(仮想通貨)の特徴
暗号資産は通貨の役割を持っていますが、中央銀行や政府が発行を管理しておらず、取引を管理する機関や人物はいません。利用者たちが分散型のネットワークでの取引をお互いに管理して成り立っています。
そのため、取引内容が広く公開されており、透明性が高い資産とも言えます。
また、インターネットを通じて世界中で利用できます。通貨とくらべて、国際間の送金が速いとも言われています。
暗号資産(仮想通貨)の種類
暗号資産(仮想通貨)の種類はどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、一般的な4つの暗号資産についてご紹介します。
- ビットコイン(BTC):2009年に世界で最初に誕生した、代表的な暗号資産
- イーサリアム(ETH):同名のプラットフォーム内で使用される暗号資産。海外ではプラットフォームと区別するためにイーサと呼ばれます。人の手を介さずに契約を実行する仕組みであるスマートコントラクト機能を持つ
- リップル(XRP):国際間の送金や決済などをスピードアップするために開発された仮想通貨です。「リップル・トランザクション・プロトコル(RTXP)」という送金システムを使います
- ステーブルコイン:価格の安定性を取るために、米ドルなどの通貨や資産と価値が連動しているタイプ
その他多数のアルトコインやトークンも存在します。
暗号資産(仮想通貨)の基本の仕組み
暗号資産は複数の技術と仕組みから成り立っており、信頼できる取引が可能となっています。
暗号資産はブロックチェーン技術で高い安全性と信頼性を支えています。
ブロックチェーンは、世界中のネットワークを通じて同じ取引記録を共有・管理する仕組みのことです。情報が一か所に集まらないので改ざんが非常に難しく、高いセキュリティが保たれています。
暗号資産の取引は、コンセンサスアルゴリズムでネットワーク全体の取引の正確性を確認しています。代表的な方法に「マイニング(採掘)」があります。マイニングで高度な計算を行って正しい取引を見つけ出した人に、報酬として仮想通貨が与えられます。
暗号資産の取引を始めるには、取引所で口座開設をする必要があります。
メールアドレスや個人情報の登録、本人確認書類の提出を行います。
その後、取引所の審査があり、審査を通過したら手続きが完了です。
口座を開設したら、法定通貨を入金して暗号資産を購入しましょう。
暗号資産は「ウォレット」という電子的な財布で管理をします。ウォレットには自分の資産を守る秘密鍵があり、これがなければ送金や引き出しができません。
仮想通貨の売買や他人への送金は、取引所を通じて行うのが一般的です。取引所では、日本円などの法定通貨と仮想通貨を交換できるほか、仮想通貨同士の交換もできます。
また、仮想通貨の特徴として、P2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを通じて、ユーザー同士が直接取引できる点も挙げられます。つまり、銀行や決済サービスなどの仲介者を通さなくても、世界中の人と自由に仮想通貨のやり取りができるのです。これにより、より早く、手数料も安く取引できるというメリットがあります。
暗号資産(仮想通貨)のメリットとリスク
暗号資産(仮想通貨)には法定通貨とは違うメリットやリスク(注意点)があります。
ここでは、メリットを2つ、注意点を3つご紹介します。
まず1つ目のメリットは、いつでもどこでも迅速な取引が可能なことです。
24時間365日いつでも取引可能で、世界中どこにいてもネットワークに繋がっていれば取引ができます。送金が速いのも特徴です。
2つ目は手数料などの取引コストが他の金融資産と比べて安いことです。中央管理者がいない分、かかるコストを減らすことができます。
一方、暗号資産には注意点もあります。
まず、価格変動が激しいことです。大きく利益が増えることが期待できますが、損失が出ることもあります。投機的な面が強い金融商品と言えます。
次に、ハッキング被害や詐欺リスクがあるということです。先程述べた2014年のマウントゴックス事件、2018年のコインチェク事件など、ハッキングの被害はこれまでにも発生しています。リスクを避けるための投資行動が必要です。
最後に、法規制や税制変更による影響を受けやすいということです。暗号資産は非常に新しい金融商品で、まだ法整備の途中です。
今後の動向によっては、法律や税金の制度が大きく変わる可能性もあります。
暗号資産(仮想通貨)の利用シーン
暗号資産は、デジタル通貨だけでなく、さまざまな場面で実用的に使われるようになりました。
たとえば、海外への送金や決済はどうでしょうか?従来の国際送金では手数料や時間がかかるケースが多くありました。しかし暗号資産を利用すれば、銀行を通さずに世界中の相手にすばやく低コストで送れます。
また、暗号資産は投資や資産運用の手段としても注目されています。価格の変動を活かした売買や、将来的な値上がりを見込んで長期保有する方法など、それぞれのスタイルで資産形成に活用されています。
そのほか、実際の買い物でも暗号資産を使える場面が増えてきました。一部のネットショップや実店舗では、商品やサービスの代金を仮想通貨で支払えるようになっており、日常の中でも少しずつ利用が広がっています。
このように、暗号資産は投資や送金にとどまらず、デジタル経済のさまざまな場面で活用される存在になってきています。
暗号資産(仮想通貨)と他の通貨との違いは?
暗号資産(仮想通貨)は他の通貨と比べて、発行主体はもちろんのこと、価値の安定性や使われ方に大きな差があります。暗号資産を運用する際には、他の通貨との根本的な違いを理解しておくことが非常に重要です。
ここでは、法定通貨、電子マネー、トークンと暗号資産との違いについて解説します。
他の通貨やデジタル資産との違いを知って、誤解やトラブルを避けられるようにしましょう。
暗号資産と法定通貨(日本円やドル)との違い
暗号資産と法定通貨の一番大きな違いは、発行・管理元が違うことです。
法定通貨は政府やその中央銀行が発行し、価値を保証してます。一方、暗号資産は民間が発行・管理しており、価値も市場で決まります。
暗号資産はリスク度が高い資産と言えます。
次に、法定通貨は強制通用力があり、その国内であればどこでも使えます。一方、暗号資産は通常の支払い手段としては限定的です。使用するには一度取引所などで現金化する必要があります。使いやすさから見ると、法定通貨が使いやすいでしょう。
先ほど、法定通貨はその通貨を発行している国内であればどこでも使えると紹介しました。逆に言うと、国外に出ると使えません。しかし、暗号資産は国が管理していないため、国境を越えても利用できます。
暗号資産と電子マネーの違い
暗号資産と電子マネーは、デジタル上の通貨という点では同じように見えますが、全く異なるものです。
電子マネーは、暗号資産と異なり法定通貨をそのまま電子データにしたものです。直接買い物などに使用できます。
チャージして利用するプリペイド型のものが主流で、1円=1円のように等価交換ができます。
特定の企業や鉄道会社、金融機関が発行・管理しています。
一方、暗号資産は法定通貨とは連動しません。相場によって価格が大きく変わります。
等価交換はできないので、取引所などで法定通貨に交換してから買い物などに使えます。
基本的に分散型ネットワークで管理されている点も、電子マネーと大きく違う点です。
暗号資産とトークンの違い
暗号資産はビットコインやイーサリアムなど、独立したブロックチェーンを持っているデジタル通貨です。
一方、トークンは独立したブロックチェーンを持っておらず、既存のブロックチェーン上で発行されるデジタル資産と言われています。
代表的な規格としては、NFTが挙げられます。NFTは代替不可能な特徴を持ったトークンです。
トークンの種類は、お金のように使える決済用トークン、ゲームやアプリ内で使うユーティリティトークンなど使い方や目的によって様々な種類のものがあります。
まとめ
暗号資産と仮想通貨。この2つは同じもので、法律や実務、ニュースなどの場面によって言葉を使い分けていることが分かりました。この2つの違いを理解すると、正確な情報収集ができることでしょう。
また、暗号資産の動向は変わりやすいものです。今後の新しい動きにも注目し、柔軟に対応できる知識を持ちましょう。