日経級の大型報道ではない。
しかし今回の来日が示したシグナルは、日本のWeb3史の中でも転換点に近い。
チャールズ・ホスキンソンが日本各地を巡りながら語ったのは、新チェーンの宣伝ではない。
それは「次のインフラ覇権をどこが握るか」という国家レベルの競争構図だった。
本稿では、3月稼働予定のMidnightを軸に、短期インパクトと中長期シナリオを整理する。
■ Midnightとは何か──“公開と秘匿”を両立する設計思想
Midnightは単なる新規チェーンではない。
Cardanoの設計思想を継承しながら、
・公開検証性
・選択的プライバシー
・規制準拠
を同時に満たす「合理的プライバシー層」として構築されている。
技術的な位置付けはL1とL2の中間。
SolanaやBitcoinなど外部ネットワークとも連携可能な“接続型チェーン”だ。
つまり競争ではなく統合を前提に設計されている。
■ ローンチ延期の意味──失速ではなく戦略調整
当初は香港開催のConsensusに合わせ公開予定だった。
しかし実際の稼働は3月最終週へ変更。
これは遅延ではない。
標準化競争に備えた「タイミング最適化」と見るべきだ。
Web3の歴史では
早すぎた技術は普及せず
遅すぎた技術は主導権を失う。
この調整は、市場投入ではなく覇権設計を優先した判断である。
■ 日本行脚の本質──市場ではなく“土壌”を取りに来ている
ホスキンソン氏が地方を回る理由は明確だ。
日本は最大級の支持基盤だから
Cardanoの初期販売では参加者の大半が日本居住者だった。
つまり日本は「ユーザー市場」ではなく創業原点圏である。
今回同行したのは関連組織のIntersect。
目的はプロモーションではなくエコシステム接続だ。
狙いは次の3層。
・地方産業
・中小企業
・コミュニティ
これは典型的な草の根拡張モデル。
中央攻略型とは真逆の戦略である。
■ なぜ企業は参入できないのか──最大障壁は「透明性」
Google
Telegram
Microsoft
Amazon
Sony
Toyota
大企業が本格参入しない理由は技術不足ではない。
公開性リスクだ。
既存チェーンでは
取引
契約
資金フロー
が可視化される。
企業にとってこれは競争情報の流出を意味する。
Midnightはここを解決する。
公開証明は維持しつつ
内容は秘匿する。
これは金融より先に産業用途で需要が爆発する可能性が高い。
■ ジブリ事例が象徴する次の戦場──IP防衛インフラ
ホスキンソン氏が例に出したのがスタジオジブリだ。
論点は著作権ではない。
AI時代の資産管理である。
IP侵害問題は訴訟では止められない。
理由はシンプル。
データはコピーされるからだ。
Midnightが狙うのは
コピー後の追跡
利用条件の自動執行
権利証明の即時検証
つまり「守る仕組み」を技術化すること。
金融チェーンではなく
知的資産チェーンという新領域だ。
■ SBI不在が示す構図──国内Web3は単一陣営にならない
今回の日本展開で鍵を握るのは、むしろ不参加プレイヤーだ。
SBIは独自路線を継続。
これは対立ではなく構造的必然。
日本のWeb3は
・統合型連合
・分散型連携
の二極競争に入った。
過去に日本企業参入を牽引したAstarの例からも分かる通り、国内市場は単一覇権が成立しにくい。
これはむしろ健全な状態である。
■ 規制戦線──米国停滞が生む“日本時間”
現在の最大の外部要因は米国だ。
Coinbaseが支持撤回した規制法案を巡り、政策議論は停滞。
TetherやCircleの事例とは対照的に、包括法整備は進んでいない。
この空白はチャンスになる。
米国が止まる時
他国が標準を作る。
ホスキンソン氏が日本に長期滞在する理由はここにある。
■ 中長期シナリオ──金融覇権ではなく産業覇権
Midnightの真の競争相手は他チェーンではない。
既存インフラだ。
もし普及すれば起きる変化は3つ。
・企業が秘密情報を公開せずにオンチェーン化
・地方企業が直接グローバル参入
・政府が監督権限を維持したまま分散化導入
これは金融革命ではない。
産業構造の再配線である。
■ 結論:来日は営業ではなく布石
今回の来日をイベント視点で見ると本質を見失う。
重要なのは
ローンチ日でも
価格でも
提携数でもない。
見るべきは一点。
どの国が次世代インフラの実験場になるか
ホスキンソン氏はすでに答えを示している。
それが日本だ。
世界はまだ気づいていない。
だが静かに始まっている。
覇権争いは、もう水面下ではない。
