世界最大級の証券取引所ニューヨーク証券取引所(NYSE)が、トークン化株式の取引とオンチェーン決済を可能にする新プラットフォームの開発を正式に発表した。
運営母体であるIntercontinental Exchange(ICE)の一部として進められる本構想は、規制当局の承認を前提としながらも、既存株式市場の構造そのものを再定義する試みとなる。
24時間365日取引、即時決済、ドル建て注文、ステーブルコインによる資金調達──。
暗号資産市場では当たり前となった要素を、NYSEが正面から株式市場へ持ち込もうとしている点は象徴的だ。
■ なぜ今、NYSEがトークン化に踏み出すのか
従来の株式市場は、
・取引時間の制約
・T+1(またはT+2)決済
・国・タイムゾーンごとの資金移動の非効率性
といった構造的な制限を抱えてきた。
NYSEの新プラットフォームは、これらを「市場慣行」ではなく「技術的制約」と捉え直す発想に基づいている。
ブロックチェーンをポストトレード(取引後処理)に組み込むことで、取引所の信頼性とオンチェーンの即時性を両立させる狙いだ。
■ マッチングはNYSE、決済はブロックチェーン
今回の構想で特に注目すべきは、そのハイブリッド設計である。
・売買マッチング:NYSEの中核技術「Pillar」
・決済・清算:ブロックチェーンベースのポストトレードシステム
・カストディ:複数チェーン対応を想定
これは「DeFi化」ではなく、ウォール街が自らオンチェーンを内包する道を選んだことを意味する。
既存の取引所インフラを捨てるのではなく、
“信頼のレイヤー”の上にブロックチェーンを重ねる──極めてNYSEらしいアプローチだ。
■ 「互換トークン」と「ネイティブ株式」の二正面戦略
新プラットフォームでは、規制承認を前提に以下2種類の株式が想定されている。
・既存株式と互換性を持つトークン化株式
・デジタル株式としてネイティブ発行されるトークン
重要なのは、いずれも株主権を完全に保持する設計である点だ。
配当、議決権、ガバナンス参加は従来株式と同等とされ、
「トークン=劣後資産」という見方を明確に否定している。
また、新ベニューでは
すべての適格ブローカーディーラーに非差別的アクセスが提供される方針で、
既存市場構造との連続性も強く意識されている。
■ ICE全体で進む「市場インフラのオンチェーン化」
この取り組みは、NYSE単独の実験ではない。
ICE全体として、
・清算インフラの24時間対応
・トークン化担保の統合
・トークン化預金のサポート
といった構想が同時並行で進んでいる。
ICEはBNYメロンやCitiと連携し、
銀行営業時間外でも資金管理・証拠金対応が可能な体制を構築中だ。
これは、グローバル市場における流動性管理の在り方を大きく変える可能性を持つ。
■ フィアット市場の「オンチェーン降伏」か
NYSEグループ社長リン・マーティン氏は、
「完全オンチェーンのソリューションへ業界を導く」と明言した。
これは単なる技術導入ではない。
既存金融が、オンチェーンという“異物”を排除するのではなく、内部化し始めたことを示している。
ICE幹部が語る通り、
取引・決済・保管・資本形成を一気通貫でオンチェーン化する構想は、
「暗号資産市場の金融化」ではなく、
「伝統金融のブロックチェーン化」そのものだ。
■ 結論:第2章に入ったトークン化競争
NYSEの参入は、トークン化株式を
「一部の実験的市場」から
「メインストリーム金融の中核テーマ」へ押し上げた。
・規制下でのオンチェーン運用
・株主権を保持したトークン設計
・24時間市場への制度的布石
これらはすべて、金融市場の第2章が始まったことを示すシグナルである。
