仮想通貨の借入とは?担保ローンの仕組みと基礎知識
仮想通貨の借入(仮想通貨担保ローン)とは、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を担保にして、日本円や米ドル、ステーブルコインなどの通貨を借り入れることができるサービスです。
最大の特徴は、仮想通貨を売却せずに保有したまま資金を得られる点にあります。
そのため、価格上昇を見越して保有を続けたいHODLer(長期保有者)にとって、流動性を確保しながら資産の上昇益を逃さない手段として注目を集めています。
また、急な出費や短期の資金ニーズにも柔軟に対応できるのが魅力です。
本章では、この仮想通貨担保ローンの基本的な仕組みや関連する用語を初心者にもわかりやすく解説します。
仮想通貨担保ローンの基本構造
仮想通貨担保ローンの基本構造は、従来の担保付き融資と同じく「資産を担保にして現金を借りる」という仕組みに基づいています。
利用者は保有する仮想通貨(例:ビットコイン)を担保として預け入れ、一定の担保率(LTV=ローン・トゥ・バリュー)に基づいて資金を借りることが可能です。
たとえばLTVが50%の場合、10万円分の仮想通貨を担保に5万円まで借入できることになります。
担保にした仮想通貨は貸出期間中にロックされ、借入金を返済することで返還されます。返済が滞った場合や仮想通貨の価格が急落した際は、担保の一部または全額が強制的に清算される可能性があるため注意が必要です。
このように、仮想通貨を担保として機能させることで、売却せずに資金調達が実現できるのがこのローンの大きな特徴です。
借入に利用される主な仮想通貨
仮想通貨担保ローンで主に担保として利用されているのは、時価総額が高く、流動性のある仮想通貨です。
代表的なのはビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)で、ほとんどのプラットフォームでこの2つが基本対応通貨となっています。
これは、価格変動リスクが相対的に低く、市場での流通量も多いためです。また、ステーブルコイン(USDTやUSDCなど)や一部のメジャーなアルトコイン(SOL、BNB、ADAなど)を担保として受け入れている業者も増えてきています。
ただし、マイナーな通貨やボラティリティの高いトークンは、担保対象外またはLTVが低く設定されていることが多い点に注意しましょう。
担保にできる通貨の種類によって利用可能な借入額や条件が異なるため、事前に取引所やサービス提供元の対応通貨一覧をよく確認しておくことが重要です。
ローン型とレンディング型の違いとは?
仮想通貨を活用した資金運用には、「ローン型」と「レンディング型」という2つの異なるアプローチが存在します。
- ローン型:仮想通貨を担保にして現金やステーブルコインを借り入れる仕組みで、借りた資金は自由に使える一方で、利息を払って返済義務を果たす必要があります。返済後には担保が返還されます。
- レンディング型:自分の仮想通貨をプラットフォームに貸し出すことで利息を得るサービスであり、借り手ではなく「貸し手」として収益を得るスタイルです。借入とは逆の性質を持ち、基本的に長期保有しながらインカムゲインを狙いたい人向けです。
両者は表裏一体の関係にありますが、目的やリスク許容度に応じて使い分けることが重要です。
短期的な資金需要があるならローン型、仮想通貨を眠らせておきたくないならレンディング型が向いているといえるでしょう。
仮想通貨担保ローンのメリットと活用シーン
仮想通貨担保ローンは、仮想通貨を保有したまま資金を調達できる新しいファイナンス手段として注目されています。
特に、仮想通貨を売却せずに現金を得られる点や、用途の自由度が高いことが大きなメリットです。
価格が上昇トレンドにある資産を手放さずに、納税資金や事業資金、生活費などを一時的に確保したいというニーズにマッチしています。
また、価格変動リスクへの備えや、資産を活かしたリスクヘッジ戦略としても活用可能です。
ここでは、仮想通貨担保ローンを利用することで得られる具体的な利点と、どのような状況で活用されているのかを3つの代表的なケースに分けて詳しく解説します。
売却せずに現金を確保できる仕組み
仮想通貨担保ローンの最大の利点は、保有しているビットコインやイーサリアムなどを「売らずに」現金化できる点にあります。
通常、資金が必要な場合は仮想通貨を売却して円やドルに換える必要がありますが、それでは将来の価格上昇の機会を失ってしまうリスクもあります。
しかし、担保ローンであれば仮想通貨をプラットフォームに預けることで、その評価額の一定割合(例:50〜70%)に相当する現金を借りることが可能です。
つまり、手元資金を確保しながらも、仮想通貨は引き続き保有しておくことができ、価格が上がればそのまま含み益を維持できます。
特に長期保有(HODL)を前提に投資している人にとっては、「資産を手放さずに流動性を得る」という意味で非常に有効な仕組みです。
納税・事業資金・急な資金繰りに対応可能
仮想通貨担保ローンは、急な出費に対処するための柔軟な資金調達手段としても活用できます。
例えば、仮想通貨の売却益にかかる所得税・住民税を支払うタイミングで、手元の現金が不足しているケースでも、保有資産を担保にすることで現金を用意することが可能です。
また、スタートアップ経営者や個人事業主にとっては、事業資金の一部として利用できる点も魅力です。銀行融資に比べて審査が柔軟でスピーディーなため、機動的な資金確保が求められるシーンにも対応しやすくなっています。
さらに、突発的な医療費や生活費などのキャッシュニーズにも応えることができるため、「売らずに借りる」という発想で資金繰りを安定させる手段として、多くの投資家・経営者に注目されています。
暴落リスクに備えた資産の活用術
仮想通貨市場は高いボラティリティを持つため、大幅な価格下落に備える戦略も重要です。
担保ローンを上手に活用すれば、価格が下がる前に資金化して現金ポジションを確保したり、暴落時のナンピン買いに備えるなど、リスクヘッジ的な使い方も可能になります。
例えば、保有通貨の価格が急騰した際に一部を担保にローンを組むことで、相場が反転して下落しても含み益を活かした資金調達ができます。
逆に、暴落時に追加購入の資金としてローンを利用し、平均取得単価を下げるという手法もあります。
ただし、担保として預けた仮想通貨が値下がりすると強制ロスカット(清算)リスクがあるため、LTV(担保率)の管理は重要です。このように、担保ローンは相場変動への対策としても有効に機能します。
仮想通貨担保ローンのリスクと注意点
仮想通貨担保ローンは、資産を売却せずに現金を調達できる便利な金融サービスですが、当然ながらリスクも伴います。
特に、仮想通貨は価格変動が大きいため、担保にしている間に価値が下落すれば強制ロスカットされるリスクがあります。
また、利息や手数料といった隠れたコストの確認を怠ると、結果的に大きな出費となる可能性もあるため注意が必要です。
さらに、借入や返済のタイミングによっては税金の課税対象となる場合もあるため、税務上の扱いも無視できません。
ここでは、仮想通貨担保ローンを利用する前に必ず把握しておきたい3つの主要なリスクについて詳しく解説します。
担保の仮想通貨が値下がりした場合のリスク
仮想通貨担保ローン最大のリスクは、担保として預けた仮想通貨の価格が大きく下落することです。
多くのサービスでは「LTV(Loan to Value)」と呼ばれる担保率が設定されており、例えばLTVが70%の場合、時価100万円の仮想通貨を担保にすると70万円まで借入が可能になります。
しかし、仮想通貨の価格が急落し、担保価値が一定ラインを下回ると、自動的に担保の一部または全部が清算(売却)され、強制ロスカットが発生します。
この際、仮に借入額が小さくても、担保価値の回復を待つことはできず、損失を被ることになります。
特にボラティリティの高いアルトコインを担保にする場合は注意が必要で、LTVは余裕をもって設定し、価格下落時に備えた追加担保の準備やアラート設定などの対策が不可欠です。
利息・手数料の負担とコスト比較
仮想通貨担保ローンには、単純な借入金額だけでなく、利息や各種手数料といった実質的なコストが発生します。
多くのサービスで利率は年率5~15%程度に設定されており、借入期間や金額に応じて支払う利息が積み重なっていきます。また、借入時に発生する初期手数料、返済時の手数料、あるいは担保の保管・管理に関する費用が別途請求されるケースもあります。
さらに、担保として預けた仮想通貨が清算される際にも手数料が差し引かれることがあり、最終的な負担は想定以上になることも少なくありません。
複数のプラットフォームを比較する際は、「表面的な利率」だけでなく、「実質年率(APR)」や「トータルコスト」に注目し、借入条件を総合的に判断することが大切です。
借入・返済に関わる税務上の注意点
仮想通貨担保ローンは、通常の売買と異なり「借入」によって現金を得る仕組みのため、借入時点では原則として課税対象にはなりません。
ただし、返済時や担保の清算時に税務上の課題が発生する可能性があります。
例えば、担保にしていた仮想通貨が強制売却された場合、その売却によって含み益が実現し、所得税や住民税の対象となることがあります。また、返済時に仮想通貨で利息を支払うケースでは、利息相当分も課税対象と見なされることがあります。
加えて、法人として利用する場合には、会計上の処理もより複雑になり、税務署からの指摘を受けやすいポイントとなります。
税金を過少申告してしまうリスクを避けるためにも、借入前に税理士などの専門家に相談し、税務処理のシミュレーションを行っておくことが重要です。
主要サービスと比較
仮想通貨担保ローンを利用する際は、どのサービスを選ぶかによって金利、対応通貨、担保率、手続きのしやすさなどが大きく異なります。
日本国内でも大手企業が参入しており、法令遵守やサポート面で安心感がある一方、海外サービスは高いLTVや選択肢の豊富さ、仮想通貨のまま借入できる点などに強みがあります。
ここでは、日本で利用できる代表的なサービスであるFintertech、Coincheck、GMOコインの概要と、BinanceやBybitといったグローバルな仮想通貨取引所が提供する担保ローンについて、それぞれの特徴や違いを比較しながら紹介します。
利用目的や取引スタイルに合わせて最適なプラットフォームを選ぶ際の参考にしてください。
Fintertechのデジタルアセット担保ローン
Fintertech株式会社が提供する「デジタルアセット担保ローン」は、日本国内で利用できる数少ない仮想通貨担保ローンサービスの一つで、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を担保に日本円で資金調達が可能です。
利用対象は個人・事業者双方に対応しており、個人向けローンの最低融資額は200万円から、事業者向けは500万円からとなっています。
担保率(LTV)は最大50%に設定されており、仮想通貨の急激な価格変動に備えて比較的保守的な設計が採用されています。
手続きや契約はすべて日本語対応で安心感があるので、国内ユーザーにも安心して利用できるサービスです。
Coincheck・GMOコインの貸暗号資産サービス
CoincheckやGMOコインが提供するのは、仮想通貨を担保に現金を借りる「ローン型サービス」とは異なり、自身の保有する仮想通貨を取引所に貸し出して利息収入を得る「貸暗号資産(レンディング)」サービスです。
Coincheckでは最大年率5.0%の利回りが設定されており、最低1万円相当額から暗号資産を貸し出せます。
一方、GMOコインの「貸暗号資産ベーシック」は最大年率10%で、少額から貸し出し可能です。
両社とも、貸出期間中は資産がロックされ、返却が保証されない点には注意が必要です。これらのサービスでは、貸出期間中に資産を自由に引き出すことはできませんが、仮想通貨を売却せずにインカムゲイン(利息収入)を得られる点で、長期保有者にとって有効な選択肢となります。ただし、利回りの高さに注目するだけでなく、返却が保証されていない点や、価格変動・取引所破綻リスクといった要素も考慮する必要があります。
ローン型とは仕組みやリスク構造が異なるため、自分の目的やリスク許容度に応じて使い分けることが重要です。
仮想通貨借入を始める前のチェックポイント
仮想通貨担保ローンは、ビットコインやイーサリアムなどの資産を担保に現金やステーブルコインを調達できる便利な仕組みですが、利用するにあたっては事前にいくつかの重要な確認事項があります。
価格変動の激しい仮想通貨を担保にする以上、強制ロスカットのリスクや手数料による負担、そして税務上の影響など、注意すべきポイントは多岐にわたります。
また、担保に出した資産の保全性や返還条件、さらにはそのサービス提供元が信頼に足る企業かどうかといった、サービス選定の判断軸も重要です。
以下では、仮想通貨担保ローンを始める前に確認すべき代表的な3つのチェックポイントを詳しく解説し、安全かつ計画的に活用するための準備を整えましょう。
借入前に確認したい3つのリスク
仮想通貨担保ローンを利用する際には、「資産の価格下落リスク」「ロスカットリスク」「返済能力の不足」という3つの主要リスクを事前に把握しておく必要があります。
まず、仮想通貨は価格変動が非常に大きく、担保価値が急落すると強制的にロスカットされ、結果的に資産を失う可能性があります。
次に、担保として預けた仮想通貨の評価額が一定の閾値を下回ると、追加担保の差し入れや即時返済が求められることがあり、これに対応できないと自動的に資産が売却されてしまう点も大きなリスクです。
そして最後に、借入後に思わぬ収入減少や支出増加が発生し、返済が滞った場合には利息が膨らむばかりか、信用スコアへの影響や損失拡大にもつながりかねません。
これらのリスクを事前に想定し、借入額を必要最低限に抑える・LTVに余裕を持たせる・返済計画を立てておくことが非常に重要です。
担保として仮想通貨を差し出す際の留意点
仮想通貨を担保として差し出す際には、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。
まず、担保にした仮想通貨は借入期間中、引き出すことができず、完全にロックされるため、緊急時の資金確保には使えないという前提を理解しておきましょう。
さらに、担保にする通貨の種類やボラティリティによって、許容されるLTV(や追加担保要求の頻度も大きく変わります。
例えば、ビットコインのように流動性が高く価格が安定している通貨は優遇されやすい一方で、アルトコインはリスクが高いため、担保価値の見直しが頻繁に行われる可能性があります。
また、借入期間中に価格が急落した場合には、予告なしに強制ロスカットが実行されることもあります。
これを避けるためには、価格アラートの設定や、余剰資産による追加担保の準備、LTVの見直しなど、リスクコントロールを意識した運用が不可欠です。
信頼できるサービス選びの基準
仮想通貨担保ローンを安全に利用するためには、サービス提供者の信頼性を慎重に見極めることが欠かせません。
具体的には、運営会社が金融庁登録業者であるか、暗号資産交換業者として正式に認可されているかを確認しましょう。
また、借入条件(利率、LTV、返済期限)や担保管理の仕組み、清算ルールなどが明記されているか、利用規約が透明性をもって公開されているかも重要な判断材料です。
加えて、2段階認証やマルチシグなどのセキュリティ対策が施されているか、サポート体制は充実しているかもチェックすべきポイントです。
さらに、ユーザーの評判や過去の不祥事・トラブル情報、利用者の口コミなども調査することで、信頼度を客観的に判断できます。
高利率などのメリットに目を奪われすぎず、「資産を預ける」という観点から総合的に安全性を評価することが、後悔しないサービス選びの鍵になります。
まとめ|仮想通貨担保ローンで賢く資金調達を行うために
仮想通貨担保ローンは、ビットコインやイーサリアムなどを担保に、売却せず資金を調達できる便利な手段です。
LTVや手数料、強制ロスカットのリスクを理解し、信頼できるサービスを選ぶことが必要だといえます。
ローン型とレンディング型の違いを把握し、自分に合った仮想通貨活用法を見つけましょう。