JPYCとは?日本円ステーブルコインの基本を解説
仮想通貨と聞くと、価格変動の激しいビットコインやイーサリアムを思い浮かべる人が多いかもしれません。JPYCはそうした投機的な仮想通貨とは異なり、日本円と可能な限り等価になるよう設計された「ステーブルコイン」です。ここでは、JPYCの基本的な仕組みや特徴を解説します。
JPYCの概要と誕生の背景
JPYC(JPY Coin)は、日本円に価値を連動させたステーブルコインで、2021年1月にJPYC株式会社によって発行が開始されました。当初は資金決済法上の「前払式支払手段」として提供され、ブロックチェーン上で利用できるプリペイド型のデジタル円建てトークンとして設計されていました。
最大の特徴は、仮想通貨の技術基盤を活用しながらも、日本の法制度に準拠した形で運用されてきた点にあります。JPYCは複数のブロックチェーンに対応しており、Ethereum、Polygon、Avalanche、Astar Networkなどで利用可能です。
2022年にはJPYC v2が導入され、トークンの管理やセキュリティが強化されました。2025年6月には資金決済法の改正により、前払式支払手段としての発行が終了し、新たに「電子決済手段」への移行が進められています。
ステーブルコインとは何か?他の仮想通貨との違い
ステーブルコインは、法定通貨(フィアット)に価値を連動させることで、市場価格の変動を抑える役割を持つ仮想通貨です。JPYCもその一種で、日本円とペッグ(連動)することで、価格の安定性を追求しています。
通常の仮想通貨であるビットコインやイーサリアムは価格の上下が激しく、投資・投機目的で取引される傾向が強いです。しかしステーブルコインは価格が安定していることからNFT決済やDeFi取引、Visaプリペイドカード連携など、「支払い」「送金」「決済」といった日常利用を主目的とし、金融取引における安定した価値保存手段として機能することを期待されています。JPYCは特に、日本円建てで利用できる点が日本国内のユーザーにとって理解しやすく、資産管理の一つとして人気があります。
JPYCの価格が安定している理由
JPYCは「1JPYC=1円」を目指すステーブルコインとして設計されています。発行元であるJPYC株式会社が、日本円を準備資産として裏付けながら、同額分のJPYCを発行していました。
2023年6月1日に施行された改正資金決済法への対応として、同法の経過措置を踏まえ、2025年6月1日より電子決済手段としての取り扱いに変更されました。
現在、この経過措置に伴い、「JPYC Prepaid」の新規発行は終了しています。
発行元JPYC株式会社と法制度の関係
日本では仮想通貨(暗号資産)関連の規制を整備しており、JPYCも資金決済法改正を受けて取り扱いが移行しています。このセクションでは、企業背景から法的位置づけ、信頼性の担保までを詳しく解説します。
JPYC株式会社の沿革と現在の取り組み
JPYC株式会社は2019年に設立された日本企業で、代表取締役は岡部典孝氏です。設立当初から、仮想通貨が単なる投機対象ではなく、日常的な決済や価値移転の手段として機能する未来を見据えて事業を展開してきました。
同社は、ステーブルコインの社会実装において国内で先行しており、法制度や金融機関との調整を重ねつつサービスを拡充しています。発行残高に対する資産裏付けや外部監査の導入など、法令遵守と透明性の確保に注力している点も特徴です。
2025年現在、JPYC株式会社は「第二種資金移動業者」への登録手続き中であり、これにより電子決済手段としての償還機能(日本円への換金)を備えた新たなJPYCを発行する計画が進行中です。今後は、より金融インフラに近い存在としての展開が期待されています。
JPYCは「前払式支払手段」?法的な立ち位置とは
JPYCは日本の資金決済法において「前払式支払手段」として分類されます。これはプリペイドカードや電子マネーと同様の枠組みに位置づけられたもので、利用者があらかじめ日本円を支払うことで、その金額相当のJPYCを取得し、サービス内で使用できる仕組みです。
この法的な位置づけにより、JPYCは「仮想通貨交換業者」の登録が不要な形で運用されています。金融庁の監督下にはありませんが、資金決済法に基づき、発行上限や供託義務などのルールが適用されます。法制度を遵守した設計によって、信頼性を確保しています。
監査・資産裏付けの仕組みと信頼性
JPYCの信頼性を支えているのが、発行元による資産の裏付けと第三者監査体制です。ユーザーが購入したJPYCの総量と同額の日本円を、JPYC株式会社が銀行口座などで管理し、その残高が月次レベルで公開される形式をとっています。
さらに、外部の第三者監査法人による検証も行われており、JPYCの発行残高と保有資産の一致が定期的に確認されています。この仕組みにより、JPYCは価格の安定性だけでなく、透明性と信頼性を担保しているといえます。
JPYCの購入方法と使い方
JPYCは仮想通貨取引所での購入とは異なる流れで入手する点が特徴です。対応するブロックチェーンも複数あり、用途によって選択肢が広がっています。このセクションでは、JPYCの主な入手手段と、実際の活用方法を具体的に解説します。
どこで買える?JPYCの入手ルート
JPYCは、仮想通貨取引所ではなく、JPYC株式会社が運営する公式販売所や、分散型取引所(DEX)などを通じて購入することができました。2025年6月1日より新規発行は停止され、現在は既発行分を利用することが可能です。
現在は既存保有者から取得することで入手が可能です。
以前は公式アプリでクレジットカードや銀行振込による日本円の支払いと同額のJPYCが発行され、ウォレットに送付する方法、UniswapやQuickswapなどのDEXを利用すれば、他の仮想通貨と交換してJPYCを取得することが可能でした。Ethereum、Polygon、Avalancheなどの対応チェーンに応じて取引が行えるため、自分の保有資産や利用環境に合わせた選択が重要です。
PolygonやEthereumなど対応チェーン
JPYCは複数のブロックチェーンに対応しています。初期はEthereum上で発行されていましたが、その後、ガス代(手数料)が安価で取引速度も速いPolygonチェーンをはじめ、AvalancheやShidenなど、用途やユーザー層に合わせた拡張が進められています。
各チェーンごとに発行されているJPYCは相互に変換することができないため、利用目的に応じて適切なチェーンを選ぶ必要があります。たとえば、DeFiサービスを活用する場合はPolygon、NFT関連ではEthereumを選択するケースが一般的です。
JPYCでできること(送金・Visaカード決済・DeFi活用)
JPYCは単なる資産の保有だけでなく、実際の支払い手段としても利用できます。
- ギフト券:Vプリカギフト、giftee Box、ちょコムeマネー
- JPYC Prepaid商品券
- 川根本町宿泊券
また、DeFi(分散型金融)サービス上で、JPYCを担保にしてレンディングを行ったり、利回り運用の対象とすることも可能です。ガス代の低いチェーンであれば、少額からの運用も現実的です。加えて、個人間の円建て送金や、NFTマーケットプレイスでの決済手段としても活用されています。
JPYCを使うメリットと注意点
JPYCは安定した価値を持つ仮想通貨として、さまざまな場面で活用されています。ただし、他のステーブルコインや決済手段と同様に、利用には一定の注意点も存在します。このセクションでは、実際にJPYCを使う上で知っておきたい利点と留意点を整理します。
為替リスクを避けながら仮想通貨を活用できる
JPYC最大のメリットは、日本円と等価で運用される点にあります。ビットコインやイーサリアムのような価格変動がなく、為替リスクを気にせずに仮想通貨の利便性を享受できます。たとえば、DeFiでの運用やNFT決済の場面で、資産価値の変動に悩まされずに済むのは大きな利点です。
また、海外のステーブルコイン(USDTやUSDC)と異なり、法定通貨である日本円に直接連動しているため、日本国内のユーザーにとって心理的なハードルも低く、資産管理がしやすい点も評価されています。
ガス代・流動性・価格安定性の実際
JPYCは複数のチェーンに対応していますが、Ethereumチェーンではガス代(ネットワーク手数料)が高騰しやすいため、少額取引には不向きな場合があります。一方、PolygonやAvalancheなどのチェーンであれば、低コストかつ高速に送金や取引が可能です。
今後のアップデートに注目
2025年6月1日の資金決済法改正により、JPYCはこれまでの「前払式支払手段」から、新たに「電子決済手段」としての扱いに移行しました。それに伴い、JPYC株式会社は5月30日13時をもって、JPYC v2の新規発行およびv1からの交換をすべて終了しています。現在は、発行済のJPYCのみがウォレット上で利用可能な状態です。
今後の注目点は、JPYC株式会社が早ければ2025年夏までに「第二種資金移動業者」としての登録を完了させる方針を明らかにしていることです。これにより、JPYCは法制度に基づいた正式な電子決済手段として、より広範な金融サービスとの連携が可能になります。
資金移動業者としての登録が実現すれば、ユーザーが保有するJPYCを法定通貨である日本円に償還する機能(換金)が導入される可能性があります。こうした機能拡充により、JPYCの信頼性や利便性、そして日常的な実用性は一段と高まると考えられます。
まとめ|JPYCは仮想通貨入門に最適な選択肢
JPYCは、日本円に価値を連動させたステーブルコインとして、価格の安定性と利便性を両立しています。銀行口座を介さずに円建ての送金や決済を可能にし、複数のブロックチェーンに対応することで利用環境も柔軟です。法制度上は「前払式支払手段」として位置づけられており、発行元による資産裏付けと監査体制によって一定の信頼性も確保されています。
価格は原則1円に固定されていますが、分散型取引所での取引においては一時的な変動が生じる場合もあります。この点を理解したうえで利用すれば、JPYCは仮想通貨を日常生活で活用するための実用的な選択肢となります。DeFiやNFTの利用を検討しているユーザーにとっても、JPYCは日本円ベースで資産を運用できる貴重な手段といえるでしょう。